いふいふほぼほぼもしもし

低燃費オタクの脳内です

ネオ・アベンジャーズを見た〜悪魔の毒毒モンスターを観て〜

初演のころ、正直私は資金的な余力が無くてフーンと見送ってしまった。

だから何がなんでも生きているうちに観たいものは観る!モットーにした今、奇跡の再演が行われてありがたいことにくっさいニオイがプンプンする六本木EXシアターで観ることができた。*1

 

結論を言うと、騙されたと思って曲を聴きに行くつもりで行ってほしい。ミュージカルが好きな人ならきっと大好きな曲しかない。80sの映画が好きな人もきっと好き。ペンライトを振ったり、なんだかイメージする舞台とは違うかも知らないけど2.5なわけでも無く、ただ単純に、破茶滅茶で、ふざけて、ふざけて、ふざけてる、はずなのに!たった5人という出演者のみで作られているとは思えない薄っぺらいように見えて重厚感とミッチミチの楽しさ、技術、音楽、何もかもが楽しめるエンターテイメント。悪魔の毒毒モンスターが上演劇場*2で興行1位*3になったのも頷ける。。

 

とここまでほぼ一息で書き連ねました。

だって、あまりにも凄まじかったので…帰宅して暗闇で座り込んでひたすらポチポチ。この感想と熱意をどうか残しておきたくなる。

一言で言えば「あー楽しかった!笑った〜」に尽きるんだけど、それだけじゃ済ませたくない時が今です。

ちなみにネタバレとかありません。

だってもうあらすじが全て。市長は悪者で、毒毒モンスターが大暴れ。でもその話だけなのに、2幕まであるし、めちゃくちゃ面白い。何で笑ってたかもはやよく覚えていないけど、グッときたシーンとかは覚えているのでそれを書き連ねたいと思います..

 

 

 

1・「普通と違う、なんて関係ない」

この作品のテーマは「環境保全」と「個性の尊重」だと思っているんですが、

美化するわけではなくて、きちんと真正面から矛盾とか見た目イジりをした上で、勇気とか、警鐘を鳴らしている…っていう実は社会派なメッセージが込められているとじんわり感じ取ってしまい、ああ私は嫌な大人だなと思いました。

でも別に含ませているわけでもなく、賢い人にはわかるよね?でもなくて。

散々ふざけながら、様々な世代に伝わりやすいように作られているなーと思って。

 

というのもパンフレット見たらああーー!と納得することばかり。

 

①脚本のジョー・ディピエトロさんは慢性疾患を持つ子どもたちに関わる仕事をしている

→見た目や身体、体調の良し悪しで比較されて辛かったり悔しい思いをしている人を知っているからこそベトベトで臭くて童貞でオタクで目が飛び出てるトキシーが生まれたのかな〜

盲目のサラは確かに盲目だけど、中身と体の好み!っていうすっきり爽やかな愛でトキシーのことを愛していく。見た目はいい方がいい!なんて考えてたけど、確かに見えないもんな!ってトキシーの片目ブヨブヨも受け入れていくわけで…最初から「自分障害持ってるんで!無理っす!」と言い切るように、所謂「障害を持ってるからいい人だ」みたいな世界をぶち壊して、みんな1人の人間として向き合っていく。…とても気持ちがよかった。この後にも書くけれど、平野綾ちゃんがまーーーじーーーでよかった。

 

②音楽、bon jovi

正確に言うとbon joviキーボードのデヴィッド・ブライアンさん。幕間にパンフレット読んで知って、経歴がすごすぎて会場の椅子で座り直しました。

いや、通りでどの曲もピアノイントロが美しい!がっつりクラシックを学んでいたらしく、音楽は全く明るくないけど、基礎がしっかりしてる人は大体すごいってこれまでの人生で学んでいるので。素人の私でも率直に素敵な曲だな〜とつくづく思ったのできっと知見があればある人ほど楽しくて突き刺さるんだろうな。

チャリティ活動にも積極的と書いてあるのですが、脚本家の人とどんな繋がりでこの作品に至ったのかはわからないこの感じがたまらなくイイ。魂で巡り合ったんだぜ!って感じ。アツい。

 

ちなみにタイトルにアベンジャーズを入れたのも、実は子どもにウケが良さそうな話だと思えたからで。市民のダークヒーローってほぼスパイダーマンじゃん…(片目落ちてるけど)(臭いし)(ベトベトだし)

舞台がニュージャージーというのも、(ブライアンの出身地ということもあるとは思うけど)ニューヨークで活躍するスパイダーマンの対比というか、オマージュというか。ブロードウェイに対する「オフ」をうまく活かしてる立ち位置なのかな〜と思いまして。

この作品ってきっと演劇への敷居も低くしながら、でも実力派なホンモノを知っている板の上の役者がたくさんの人を笑わせる、っていうめちゃくちゃかっこいいことをしている。

いわゆる大劇場の作品も絶対に欠かせないものだけど、いわゆるB級も松竹梅みたいな優劣ではなくて、Aタイプ・Bタイプ…のようにそれぞれジャンルが違うだけ。みんな違って、みんないい。そう、普通も何もない!みんな個性!イエス

 

2・役者さんが5人しかいない

主演の福ちゃんがまず2トンありそうな衣装着て歌って踊って、

それなりにセリフもある+衣装が全く違う役を16役やってる人がいたり、12役やってる人がいたり。

さらに2役を同時に行う人がいる。

1役のエネルギー消費がとんでもない人もいる。

カーテンコールで5人しか出てこなかったことをこんなにも疑った作品は私は初めてです。

アンサンブルさんいませんでした?いやいや、またまた〜えっ、本当に?って思いました。

一つ一つの役が一人一人存在していて、全然違う役として存在していたので、他の作品観るときにハードルが高くなりすぎちゃいそうなくらい当たり前のようにこなして、公演後のトークショーでもあったように全員がモンスターだと思いました。改めて5人とは思えない。やっぱり毒毒カンパニー各位はアベンジャーズだったんだ!と確信したら、スタオベ待ったなしでした。ウワアアアア〜!喝采

 

全員めちゃくちゃ歌が上手でダンスも上手が大前提で…そこからさらに、という話なのですが

 

①宮原さんは恥ずかしながら今回初めて知り、観たわけですが、、、怪しい雰囲気が似合いすぎている。ずっと胡散臭くて、セクシーで、めちゃくちゃ面白い。教授の印象が強いけど、ジェラピケ風のペアルック男子とか女装も面白かった〜

もっと2枚目な役が多いのかと思ったら違う意味でのセクシー担当で日本のミュージカル界めちゃくちゃ明るいな〜と思いました。

②林くんはステップが無重力、「そうだった〜〜〜〜かわいい顔と上手すぎる歌で忘れてた〜〜〜they武道(宇宙six)の人だ!」を毎回脳内で繰り返す。姿勢の落とし方とか、そんなにしなやかに踊る警察官いるなら教えてほしい。ブチァゲ↑↑なキャラを初めて観たので新鮮だったし、林くんってこういう引き出しあるんだ〜宮藤官九郎作品めちゃくちゃ合いそう〜って思いました。あの林くんならきっとパトカーのドアはジャンプすると思う。

③霧矢さんはも恥ずかしながら初めまして、初見だったのですが出てきた瞬間に私の癖である「元宝塚男役トップスターの方による女性の色気とも違う色気がとんでもない女性役」がグサグサ刺さり、ずっと市長に胸ときめきました。ターンが美しすぎる。男性側にきっと女性をこう扱った方が男性的にかっこいいですよ〜とかアドバイスしてそうなあの美しさがたまらなかった、あれ、私ってもしかして市長のしもべ?…なりたい。なれるものならなりたい。

お母様の役ではお母様として存在していたし、スイッチ、どうなっているんだろうか…本当にかっこよかった…ニュージャージーいいところなんだろうな…

平野綾ちゃんは私でも知ってる!というレベルの有名人なわけで、何より私が4回観た名探偵コナンのゲスト声優だった方なので「ウワーーー!エリー!本物だーーー!」と大興奮していたわけですが(なんだかいろいろと辛そうだなと勝手に心痛めてしまうこともあったので…)

自身の経験をひとつひとつ積み重ねて、綺麗な人生のグラデーション!って感じで。舞台上に還元している表現の全てがピカピカ輝いていて、ものすごーーーーく幸せな気持ちになりました!

性に積極的な役っていうのもめちゃくちゃ面白かったし、絶妙な間とか動きがコメディの神様が爆笑してると思ったし、平野綾ちゃんのコメディもっと観てみたい!って思いました。LIFEとかで観てみたい。めちゃくちゃ可愛い声で駄々こねる姿も良かったし、杖を槍のように捌く姿もかっこよかった。あの細い腕と身体のどこにそんなにもパワーがあるのか…すごい…本当に……かわいかった………

④福ちゃん、トキシー。4世。他の4人がすごすぎて、福ちゃん不在時のシーンのときに、「あれ、福ちゃんの役ってどんなのだったっけ、主役誰だっけ…」と一瞬心が混乱したのですが、カップルに襲いかかるシーンかな?失恋して、化け物であることを思い悩み、葛藤して、孤独を抱えた姿を見て、泣いてました。失恋シーンさえも爆笑してたはずなのに。今改めて、「やっぱり福ちゃんしかこの役できない!!!!!福ちゃんが主役!福ちゃんすごい!!!!!」と思います。闇の抱え込み方が福ちゃんって風を纏うが如く、迫り来るというより覇気みたいな感じで、強くなればなるほど闇が大きなオーラになるような役、右に出るどころか世界一だと思っています。美しく踊ることも、切なく歌うことも、舞うことも、楽しくてハッピー!を表現することもできる中で闇の引き出しが一番受け取り手にも見えないくらいの闇で、ブラックホール。それがかっこいいし、魅力的だし、福ちゃんの誰にもない魅力だと、改めて思いました。なのにラストにはそんなこと忘れてあーあ、楽しかったなーって思えるから闇の使い手、っていう表現が適切なのかもしれない。全然関係ないけど、闇の魔術が得意なのかもしれない。福ちゃんって闇の魔術への防衛術得意そう。

3・セットと照明と生バンド

この作品に絶妙にB級っぽさを出すのがセットや小道具の一つ一つが最大のポイントだと思いました。なぜなら、あまりに精巧に作ったら、逆にシンプル過ぎたら。この作品がめちゃくちゃS級のものすごいミュージカルになってしまって、ふざけていることも笑えなくなってしまうのではないか、というくらいにクオリティが高すぎる。だから、似せて作るわけでもないマネキンの首とか腕とか、デフォルメが強い、まさに80sやB級映画にありそうなセットや小道具を意識している作り込みがもう、ホラーが大好きな私にとってはもう、もう、堪らなくて!!!!もちろん「ぽさ」を表現するそのプロの技術がめちゃくちゃかっこよくて、実はなかなか近くてみやすい真ん中の席で観劇したのですが、道具ひとつひとつの表情が肉眼で見える場所で本当に嬉しかったです。興奮。大興奮です。

照明さんはもう、美しすぎる。毒毒っぽさや効果的な使い方というか、おどろおどろしさ、ホラー感、様々なパターンで「不気味」を表現していて、冒頭に書いた「臭い」の印象は実はセットよりも照明の効果が高かったと個人的に思いました。もちろん演技とか、音響とか、全てが揃った上ではありますが、いかに世界観を映し出す照明になるか、ものすごく考えてあるのではないかな〜と素人ながら想いを馳せました。なぜなら普通に怖いと感じるシーンもあったから。洋画ホラーって感じで、めちゃくちゃよかった。映画の中に入り込んだみたいで、舞台の醍醐味を肌で感じました。ありがとう、照明さん…

そしてそして絶対に欠かせない、生バンドの皆さん。開演前のギュイーーーーン🎸!でハッとさせられ、名曲のひとつひとつをバチバチに響かせて、舞台見ながらライブも楽しめるというお得すぎる状況。ペンライト振ろうぜ!って考えてくれた関係者の方々、ありがとうございます。舞台だとなかなか手拍子さえも憚られることがあるので、アツい気持ちを、ノリノリだぜ!って気持ちをあの場で伝えられてよかったです。歌と同じくらい、音の感情もものすごく大切だと思っているのですが、バンドのみなさんが(プロだから当たり前だよ!と言われるかもしれませんが)シーンごとに感情を乗せた演奏をされていて、なんか、こう、ずっと、胸を掴まれてぐーっと叩き込まれて、響いてきたんです。ずっと音がかっこよくて、それがまた演目とアンマッチな感じで、めちゃくちゃ面白くて、でも感動しました。。

 

またまた長くなりましたが、

劇中で「男は醜い生き物」というセリフに実は救われました。この2〜3年、男の人信用ならないな。って思ってたので。

でも、醜い生き物よ〜♪って歌われたら、そっか〜〜♪♪って笑っちゃいました。なんだ、みんなおんなじ気持ちだったんだなって。それに、書いてる人が男なんだから自他共に認めるってことなんだなって。

バカバカしいってマイナスな表現だと思うけど、そうやって笑えることで救われる誰かもいるから、やっぱりこういうものを見て笑って過ごせることが少なくとも私にとっては幸せのかたちのひとつなんだなと思いました。

 

最後になりましたが再演、おめでとうございます!1人でも多くの方にこの作品が届きますように。

*1:大丈夫全然臭くないですよ。空調完璧いつも通り清潔なEXシアターです

*2:ジョージストリートプレイハウス。ニュージャージーにある。教育目的で学生向けに社会問題を取り上げた作品も上演している、パンフより抜粋

*3:史上最高の興行成績を記録、パンフより