いふいふほぼほぼもしもし

低燃費オタクの脳内です

思考を止めるな!〜愛称蔑称を観劇して〜

以前からニュースなどで「あだ名を禁止する校則がある」と聞きますが、正直ばかばかしいと思っていました。

あだ名があるから仲良くなる、とは思わないけどお互いに不快でなければわざわざ禁止する必要もないし、ましてや校則なんて。「物事の良し悪し」を考えることを停止させてしまうようで、学校から一つの学びを消すようで寂しいような、悲しいような、悔しいな〜と思っていました。

一方で、私が生きる会社や社会ではあだ名で呼ぶことは禁止と言わないまでも、「苗字+さん」で呼ぶことが一般的となっていて、ハラスメントの観点から「相手の気持ちを考える」ことを尊重することが当たり前の世の中。

私自身、「名前+ちゃん」はもともと呼ばれ慣れていないこともあり、「やめてください」と断る人間です。というか、会社では年齢関係なく、どんなに仲が良くても○○さんと呼ぶし、敬語を使うようにしていました。

なんならどんなに仲良い人でも○○さん呼びをして、敬語で接することがあります。基本的に年上の方にはそう。他人行儀だなあと言われることもありますが、心はきちんと開いているし、深い話だってできる。

…前置きは長くなりましたが、そんなわたくしが最高のオトコと呼び声高い原嘉孝さん主演により、初・山田ジャパン作品を観劇することに。しかも作品名は「愛称 蔑称」

原ちゃんはSHOCKか何かで「声がイイ!」と気がついてから、ノサカラボ「罠」や「スローターハウス」で何かと脳みそフル回転コースの作品を観劇することが多く、毎回観劇後にものすごい頭痛が……これは私が日頃どれだけ思考を止めているか、脳の運動不足による筋肉痛だと思うのですが。もれなく今回も脳の筋肉痛がズキズキと止まらず、欲望のままにミスドのドーナツ4つかましました。おかげさまで元気いっぱい。ありがとうドーナツ。

 

舞台は長野県のとある中学校の職員室。

お互いをあだ名で呼び合うこともある関係性の教師や保護者たち。そんな中、転校生の親があだ名を禁止にするよう求めきて、懇親会という名の討論をする__という内容。

ちなみに、今回書きたいのは

・全体的に作品から感じたこと

・私の仮回答

こんな感じで感想文を残していきたい。

 

・全体的に作品から感じたこと

①「自然な流れ」という激流を遡るパワー

「あだ名はとても自然なもの」「仲良くなれば・仲良くなるための、当たり前のもの」この考えを一度考えさせるための労力たるや、作品を通すとものすごいエネルギーがいると改めて実感しました。

最近中島敦山月記を読み返したのですが、自分の「恥ずかしい」と思う気持ちを守ろう/隠そうとするあまり、虎となってしまった〜みたいな一節を読んで中島敦スゲーと思っていたところ。保身が第一となっておりました。

人は、自分のためにと人に牙を剥き、威嚇し、襲いかかる。もちろん身を守ることは大切だけど、何かを守る時、【効果的な守り方】っていうのはある。

それが、劇中で言うところの「言い方」であると思います。

きっと、マキノさんは東京で極力理性を保っていた時もあったと思います(燃え上がりやすそうとは思いますが)

ただ、クマちゃんが娘さんをかわいいと思うことを熱く、強く、燃えるように話す姿に私は胸を打たれたようにマキノさんのように烈風の如く騒ぎ立て、煽り、訴えかけなければ今回のような議論は生まれなかった。そんなことで?必要ない!と言われながらも食い下がり、ようやく一人一人に考えさせることをしたあの力強さ、、大江さん(かな?)の息子を守るための力強さが激流さえも遡る力強さで、親の愛…「親として子を守る」生物としての本能的な力強さを感じました。

 

②またまた出会ってしまった俳優陣

私が本当に無知なだけなのですが、日本って名優ごろっごろわんさかいません???!!

いとうあさこさんはバラエティの顔しか知らなかったのですが(優秀病棟を見ていないんです本当にすみません)「あだ名禁止」と決定した後の感情の昂り、鳥肌が立って「ワーーーーーー凄ーーーーーーー」と頭の中が真っ白になりました。往年のもたいまさこさんのような…でも、あさこさんにしか立てない位置でもっとドラマや映画での活躍を観たいし、舞台チェックします!

終わってから校長が黒田アーサーさんだと知り、「やけにシュッとしてるなぁ」と思っていたのですが納得。シュッとしてる人だった。でも作品の中では昔ハンサムで人気者だった校長にしか見えなかった。…やはり長く芸能界にいる人って理由があるよね、才能が溢れているんだな‥

松田さんは出てきてすぐ面白くて、でも(東京ダイナマイトの人に似てるな〜)と思ってたら東京ダイナマイトの松田さんだった。なんなんだ!みんな役を生きる人しかいない!ベンツ柄のジャージ面白すぎる!そしてキャラに負けない佇まいと間の取り方!芸人さんは「芸」とつくぶん、本当に達者な方ばかり…

個人的に一番印象的なのは長江さん。

Xで見かけた際にかわいいーしか思ってなかったのですが、宝塚出身の人ってなんでこんなにも凛々しくて美しくて眩しいの?!とある生徒の話を聞くシーンでそれまでの攻撃的な目から遠くに映る誰かを見つめる瞳に変わっていて、それが一貫して母親としての「守り」であることを目だけで表現していて…もちろんめちゃくちゃ綺麗だし力強いんだけど心の機微が、、繊細……今でもため息が出るほど感嘆させられました。ちなみに最後はけるとき、ちょっと目が合った気がしてどきっとしちゃった。キュン。

あと、俳優さんのお名前がわからないのですが先生役の方々、クマちゃんとその奥さんも良かった…生徒役のみなさんもしっかりとストーリーを支えていたし、これだから劇団は……最高…………無知ですみません……9月にまた作品あるって言ってましたね………わかりました……

そして、原嘉孝さんについては…

アッチィ!とにかくアッチィ。

まっすぐの中で、曲げたくない気持ちを自分の中で折り合いつけていく、そこにはきっと彼なりの母校と地元を大切にしたい、という軸があって、そんな葛藤をあのきれ〜な瞳に光を入れたり入れなかったり全身全霊を感じて今回もいい作品と出会わせてくれてありがとう!と勝手に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

ちなみに作品と全く関係ない話ですが、実は1列目で観劇したのでよく見えました…乾燥肌だと仰っている肌。つるんつるんでした。努力の賜物。私も保湿がんばろう…後食事と運動と睡眠…

 

・もしもあの話私がいたならば

私の仮答え。あだ名を禁止にはしない。

 

ただ、生徒に一度あだ名について討論をさせませんか?と提案する。

とてもリスクのあることだけど、とにかくあだ名を通して、「相手の気持ちを考えること」「自分の考えを自分の言葉で話すこと」を生徒にさせる。

時に人は思考をさせないようにルールを決める。そして組織や、仕事や、大量の業務が円滑に進むことがある。もちろん、大切なことだし、時間が限られた中で最大限にたくさんの人が得をしやすいのは「ルール決めの中で動くこと」だし、実際ルールがないと難しいことはたくさんある。討論できない人もいる。そんなこと、わかっている。

 

だけど、カーテンコールで「すぐに決める/答えることが求められる世の中だけど、一度立ち止まってみるのもいいかもしれない」と話していて、、まさにその通り。すぐに答えを出す必要はないんです。

 

…私は無職となりそれを実感しておりまして。

早い方が何事もいいかもしれないけれど、立ち止まることも進むことと同じくらいの大切なことであると、誰かがもっと伝えていく世の中になればいいなと強く思っています。私は次の職場で少しずつ広めて行けたらいいかな。

お金とか、老後とか、確かに不安だらけの世の中だけど一人一人にとって大切なものを見失いやすい世の中。だけど、身体が健康であれば、結構、本当に、なんとかなる。人間って結構強いし、社会はいい感じにできている。

もっと身近なことで例えれば、この色はブルベには合わない、このコスメは口コミがいい、…でも、人はみんな細胞レベルでまったく同じ人なんていないし、それぞれの悩みや強みや弱みは全く違う。合う合わないがあって、目指すところも違う。

とにかく、この世に「正解」なんてないのに、常に正解を導こうとする。正解がないことを現時点での良しとして、次に進んでいく。命ある限り、次の「良し」を考えていくことが仕事だったり、人生なのでは?それに、正解がないからこんなにも面白いのでは?取り返しのつく間違いに噛みつきすぎて、取り返しのつかない過ちを見過ごしてはいないか?…そんなことを思いながら生きています。まあ、そう思えない人もいることも、知っていくことが大切でもありますが。

日常の中で誰かが守ろうとして牙を向けた先にいるのは、誰かにとって大切な人である人であることを、

相手がどんなにヘラヘラしていようが

気にしないよ、と普段は言おうが

今一度、相手を自分だと思って考えることが必要。昨今の「批判」「指摘」などに感じることだと、舞台の感想の中にどさくさに混ぜて入れておきます。

あと、どさくさに混ぜて言うと「面白い」での意味で使われる「しぬ」あれ、なんとかならないかな。もっと【おもしろい】を表現するために、言葉は無限に溢れている。流行が一番強いと思うけど、とても残念な表現のひとつだと思ってる。これに関して語彙力がないという逃げ道はあまり作りたくない。

 

まあざっくり言うと!

生徒にも先生にも保護者にも考える機会を与えたいからあだ名は禁止しない。

ただし、あだ名について年に1度、話す場を生徒にも大人にも設ける。

これが、私の仮の答え。

 

演者さんの表情や、年季の入った冷蔵庫をはじめとした小道具、目が足りないしセリフも多いし自分も考えたいしでとにかく頭をフル回転して、笑って、心を刺されて、散りばめられた表現のひとつひとつを拾い上げていくような繋がりを感じて…本当におもしろかったです!

 

最後の最後に余談ですが、個人的に気になったのは作品前後に中国語で楽しそうに会話して、作品を楽しまれていた方々、、尊敬の眼差しでチラチラっと見てしまいました。別言語の演劇(しかも笑いどころを理解する)…なんという教養の高さ。まだまだまだまだ、脳の筋トレはこれから____